営業マンが世の中で一番憎んでいる三文字といえば、「ノルマ」ではないでしょうか。
今月中に契約を何件とってこい。契約が取れるまで帰ってこなくていいからな。こういった言葉を受けて胃が痛くなっている営業マンは少なくありません。
昨年大きな問題となった、ゆうちょ銀行の不適切販売でも、重すぎるノルマが一因なのではないかと言われています。
お年寄りを騙すような精神状態にまで追い込むのはどうかと思いますが、ノルマというのは、売り上げを上げるためには効果的な手段だと思います。
ただ、ノルマを設定すれば必ずしも売り上げアップにつながるわけではありません。
今回はノルマを設定するメリットとデメリット、そしてどんな時にノルマを設定すべきなのか、またしない方が良いのかを解説していきます。
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ノルマを設定するメリット
まず最初に言っておきたいのが、人は楽をしたがる生き物です。
昨今のコロナ禍で、在宅ワークが一気に広がりましたが、在宅ワークで働かず、ダラダラと時間をつぶしているという友人は一人二人ではありません。
規模の大きな話になりますが、ソ連で社会主義が失敗した理由の一つも、給料が同じならできるだけ働きたくないと勤労意欲が低下し、経済成長が止まってしまったことです。
働かなくて済むならできるだけ働きたくないと思っている人がほとんどです。
社員を管理することができる
多くの経営者からすると、一生懸命働くのは当然のことでしょう。
しかし、それはその人の性質によるものもあれば、売り上げが上がれば上がるほど会社のお金が増え、逆に売り上げが下がれば会社がつぶれてしまうのですからモチベーションが違います。
一方で、雇われているだけの労働者は、そこまでモチベーションが高い人はごく少数でしょう。
一生懸命働いても働かなくても給料が変わらないのであれば、少しでも楽をしたいと思うのは当然のことです。
さらに、営業、特に外回りの営業であれば、行動をすべて把握することはできません。もし客先へ向かう途中でサボっていたとしても、よっぽどのことがなければ気づくことができません。
そうした際に、社員を管理する方法の一つがノルマの設定です。
ノルマが決まっていて、そのノルマを達成できなければなんらかの罰があると、その数値をクリアするまではサボるわけにはいかなくなります。
自分を律することができる
また、ノルマは他人に課すだけでなく、自分に課すこともあります。
先ほども言ったように、人は楽をしたがるものです。
しかし、目標達成のためにどうしても頑張らなければならないときもありますよね。
そんなときは自分にノルマを課してみてはどうでしょうか。
目標やノルマを設定していなければ、今日はこれくらいでいいか。もうこれくらいでいいか。と、限界の手前で終わってしまいます。
しかし、わかりやすい数値目標があれば、そこまでは頑張ろうと自らを奮い立たせることができます。
例えばシャトルランを2チームにわけて行うと、後のグループの方が記録が出やすくなります。
前半のグループの最高が120回なら、そこを目標にして、それまで耐えれば良いのです。120回に到達するまでは限界ギリギリまで頑張ることができます。
一方で前半のグループは、最後の一人になってしまうと、目標がなくなるので、本当はあと1~2回は頑張れるはずなのに、限界の手前でやめてしまうのです。
目標が「ある」のと、「ない」のとでは限界ギリギリまで頑張れるかどうかが変わってきますから、本当に頑張りたいときに自分にノルマを課すことはとても効果的です。
ノルマを設定するデメリット
逆にノルマを設定することによるデメリットはあるでしょうか。
精神的に追い込まれてしまう
ゆうちょ銀行の不適切販売でもありましたが、ノルマを達成するために詐欺のような手法に手を出してしまう人がいます。
ひとりやふたりではありません。
では詐欺まがいなことをした人たちは、とんでもない悪人だったのでしょうか。わたしはそうは思いません。
それだけ追い込まれていたのだと思います。
もちろん被害にあわれた方が一番かわいそうですし、詐欺まがいなことをした人たちを庇うわけではありませんが、普段は善いお父さんだったりするような人たちが精神的にそこまで追い込まれてしまっていることが恐ろしいのです。
ノルマだけが悪いのではなく、ノルマを達成できなかった際の上司の対応に一番問題があるとは思いますが、ノルマ設定がそういった危険性をはらんでいることは事実でしょう。
これは、単純に詐欺まがいがダメというだけでなく、優秀な人材がノルマに苦しんだ末に辞めてしまったり、精神的に病んでしまったりということがあれば、会社としても損失があるということです。
その損失と会社の売り上げとを考えた時に、どこまでノルマ設定を厳しくするかというのは考えるべきだと思います。
ノルマを達成すると気が抜けてしまう
ノルマを設定することによって、それを達成するまではさぼれないという話をしましたが、逆に言うと、ノルマを達成してしまうとサボり放題だとも言えます。
本当はもっと多くの契約が取れたはずなのに、ノルマを設定することによって、そのノルマまでしか働かないということになりかねません。
これに関しては、ノルマの再設定を行えば解決するようにも思えますが、毎回ノルマを達成するたびに数値を引き上げられてしまうと、モチベーションの低下につながります。
また、Aさんにとってはノルマ達成は余裕で、Bさんにとっては厳しい、といった際の対応も簡単ではありません。
そういった部分はノルマを設定するデメリットといえるでしょう。
ノルマを設定するべきなのはどんなとき?
このようにノルマとは、絶対的に良いものでなければ、絶対的に悪いものでもありません。状況に応じて使い分けることが大切だと思います。
ではどのようなときにノルマを設定するべきで、逆に設定するべきでないときはどのようなときなのでしょうか。
関連記事:そのノルマに意味はない!合理的なノルマを設定するまでの考え方
営業を多く抱えている
営業の人数が多くて、管理しきれない、または売り上げ成績がなかなか上がらないという場合は、ノルマの設定は間違いなく効果的でしょう。
しかし、その際は最低限のノルマ設定と、それ以上の契約が取れた際のインセンティブを設定するべきでしょう。
そうすることでモチベーションを保ちつつ、最低限の管理ができるはずです。
全員のモチベーションが高い
スタートアップなど、全員のモチベーションが経営者と同じくらい高い場合には、むしろノルマの設定は足かせになってしまうかもしれません。
意識のどこかで、ノルマが達成されればそれで大丈夫だ、という感覚がうまれてしまうかもしれません。
全員が当たり前のように朝から晩まで全力で働けるメンバーなのであれば、ノルマではなく、長期的な目標を全員で共有して、とにかく限界まで頑張る、を続けた方が効率が上がるのではないでしょうか。
まとめ
ノルマを設定すると、社員の管理がしやすく、また自分自身にノルマを課すことで限界まで頑張れるというメリットがあります。
その一方で、ノルマを設定することが足かせになってしまったり、精神的な消耗や、モチベーション維持の難しさなどのデメリットもあります。
ノルマだけでなく、インセンティブなども使い分けて、会社全体の利益があがるように調整しましょう。